アートゼミの アートノート

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子ども壁画制作記 後編

子ども壁画制作記 後編
何とかビニールシートを工面し教室の床に敷くと、子どもの体の何倍もの大きさになった。
 絵の具を塗るのは、6歳から13歳までの子どもたち。
 普段は使わない大きな刷毛をそれぞれ手にしてシートの前にずらりと並んだ子どもたちは、靴下に絵の具がつかないよう裸足になり、目を輝かせて絵の具を塗り始める。

絵の具を水で溶いた絵皿が所々に置いてある。こんな時は大抵どこかでお皿をひっくり返したりする騒動が起こるものだが、驚いたことにそれは一度もなかった。それくらい皆、集中していた。

 塗る作業は年齢順にリレー形式で2週間続く。

 制作中に濡れている画面を踏んで足の裏に絵の具が付くことがあったが、描く楽しさの方が勝ったのか、汚れは気にならないようだった。
 少しでもスタジオでの見栄えが良くなるような色の調合やおおまかな構図は私たち大人が指導し、さながら子どもの描く抽象画を目指した。
 中腰になって描いている本人には全体像は見えないため、当然、大人の思うようには進まずにエラーが生じるのだが、子どもの絵から溢れるパワーでそれも目立たなくなるのは不思議な感覚だった。

 壁画がほぼ8割方仕上がってきた時、筆のストローク(筆触の長さ)が、子どもの手や体の大きさに連動していることに気がつき驚かされた。
   絵は身体で描くのだ!
と発見できたのは本当に大きな気づきだった。

 最後の仕上げ作業は3歳から9歳の子どもが手のひらサイズの綿布にクレパスや絵の具で描いたお花をシートに貼り付けること。子どもの手で制作したお花場の巨大絵画は色とタッチが踊り、キラキラと輝いていた。
 テレビ局のスタジオに無事に壁画が搬入され、ニュース番組でお披露目をしていただいた。
 動画サイトのチャンネルにも同じものをアップして下さったので、教室で子どもたちにみせてあげると、最年長の男の子が画面を指差し「あ、あの辺僕が描いたな」
と満足気に笑っていた。
 保護者のお母さんを始め幅広い年齢の方にも好評だった。

 制作は大変だったが、子どもたちの笑顔から元気をもらえたと実感した。